今日の一句 #506

暁をいだいて闇にゐる蕾  鶴 彬

暁は身の内にこそある。
と、かたく小さな蕾が
ぎゅっといだいている信念や希望。
闇の絶望的な深さが
むしろその不屈のきらめきを
際立たせている。


鶴彬は1909年(明治42)、石川県生まれ。
プロレタリア、反戦の作品は広く世に知られ、
時代を超えて読み継がれている。

そして、その作品により官憲に逮捕され、
1938年(昭和13)、収監中に赤痢で死去。
という生涯もまた、
川柳史に鮮烈に刻まれている。


 屍のゐないニュース映画で勇ましい
 手と足をもいだ丸太にしてかへし
 胎内の動き知るころ骨がつき


ところで今年1月、
『アンブレイカブル』(柳広司著/角川書店)
という本が発行された。
鶴彬や小林多喜二など、

治安維持法とたたかう男たちのエピソードが
それぞれに短編小説化され、収載されている。
当時の危機感がリアルに今に響く、

実に興味深い1冊。







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