Vol. 16 網 戸

 ここ何日かは、しのぎやすく、秋の気配が感じられるようになってきた。少し前までは、昼も夜も冷房が欠かせなかったが、今は窓を開けて、自然の風を部屋の中に入れられる。

 何年か前に、網戸の張り替えをした。雨風や日射しに晒されて、かなり撓んできて、破れた網目からは、虫たちが部屋に入ってくるようになったためだ。

 網戸の歴史を辿ると、ルーツは蚊帳(かや)。子供の頃の遠い記憶に、天井からつるした蚊帳の思い出がある。畳んで仕舞うと、かなりの重さと嵩になり、押し入れの一角を占めていた。蚊帳は中国からの伝来で、戦国時代までは、上流階級だけの贅沢品だった。

 大正に入り、窓ガラスが普及。虫の侵入を防ぐために、蚊帳の材料で、窓を覆うように張っていたが、その後、防虫網の開発と、アルミサッシの登場により、網戸が広がっていった。網戸が普及するにつれ、蚊帳は姿を消すことになる。

 新しい網戸を通しての景色は、くっきりクリア。網戸屋さん曰く、「前の網戸と違い、新しい網戸は網目が細くこまかく、丈夫。何より風をよく通すんですよ。」

  風に似たものが入ってくる網戸  八上桐子