サーカスを抜けたか象の土俵入り 平賀胤壽
あっと驚きの転身である。
土俵入りは、横綱のそれではなく、
幕内、十両力士たちが円形に並ぶ方かと思う。
その輪に、かの象がいて、
正念場はいよいよここからだろう。
サーカスいちの人気ものが、なぜサーカスを抜けたのか。
そりゃあいろいろ苦労もあったろうけれど、
すべてを捨てて、よりによって、
こんなに厳しい世界に、いや、夢に挑戦するとは。
と、主人公とともに目をぱちくりしながら
象よ、やるなあと声援を送りたい気分。
外連味たっぷりにして、
象の心情がいろいろとリアルに慮られる句。
さあ、今日の一番はどうか。
(句集『水摩』 平賀胤壽/発行 いりす 発売 同時代社)
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