今日の一句 #508

サーカスを抜けたか象の土俵入り  平賀胤壽

あっと驚きの転身である。

土俵入りは、横綱のそれではなく、
幕内、十両力士たちが円形に並ぶ方かと思う。
その輪に、かの象がいて、

正念場はいよいよここからだろう。

サーカスいちの人気ものが、なぜサーカスを抜けたのか。
そりゃあいろいろ苦労もあったろうけれど、
すべてを捨てて、よりによって、

こんなに厳しい世界に、いや、夢に挑戦するとは。

と、主人公とともに目をぱちくりしながら
象よ、やるなあと声援を送りたい気分。

外連味たっぷりにして、
象の心情がいろいろとリアルに慮られる句。
さあ、今日の一番はどうか。



(句集『水摩』 平賀胤壽/発行 いりす 発売 同時代社)







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