今日の一句 #760

ネイルの先にうつるリアス海岸
四ツ屋いずみ


「うつる」は、映る、か。

自身の体のごく先端に、
複雑に入り組んだ海岸が映る。
ネイルの先で波しぶきが砕けているようにも思える。


肉体の一部と大自然、
今という刹那と、海岸を育んできた遥かな歳月。
その両者が結びつき、美しい心象景が立ち上がる。


けれど「うつる」は移る、伝染る、かもしれないし
「ネイルの先」も、ネイルのその先という方向性かも。


そんな語の揺れをはらんだまま、
リズムには息継ぎがなく、
その緊張感が、この句の世界を

きりりとミステリアスに引き締めている。

本作は「川柳ユニット 遠雷」による
できたての川柳アンソロジー「パ・ド・サンク」から。
ユニット5名の自選句、ショートエッセイや、
「川柳リレー」が収録されたお洒落で軽やかな一冊。


 薄氷の上で踊っている二人     一家 汀
 千年の雨がやむまで指めがね    宇佐美愼一
 バス停は秘密の基地のめくらまし  西山奈津実
 呼吸より手前にひらく鰓の闇    落合魯忠


(川柳アンソロジー「パ・ド・サンク」
  川柳ユニット 遠雷 / 私家版 2026年7月) 

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