ネイルの先にうつるリアス海岸
四ツ屋いずみ
「うつる」は、映る、か。
自身の体のごく先端に、
複雑に入り組んだ海岸が映る。
ネイルの先で波しぶきが砕けているようにも思える。
肉体の一部と大自然、
今という刹那と、海岸を育んできた遥かな歳月。
その両者が結びつき、美しい心象景が立ち上がる。
けれど「うつる」は移る、伝染る、かもしれないし
「ネイルの先」も、ネイルのその先という方向性かも。
そんな語の揺れをはらんだまま、
リズムには息継ぎがなく、
その緊張感が、この句の世界を
きりりとミステリアスに引き締めている。
本作は「川柳ユニット 遠雷」による
できたての川柳アンソロジー「パ・ド・サンク」から。
ユニット5名の自選句、ショートエッセイや、
「川柳リレー」が収録されたお洒落で軽やかな一冊。
薄氷の上で踊っている二人 一家 汀
千年の雨がやむまで指めがね 宇佐美愼一
バス停は秘密の基地のめくらまし 西山奈津実
呼吸より手前にひらく鰓の闇 落合魯忠
(川柳アンソロジー「パ・ド・サンク」
川柳ユニット 遠雷 / 私家版 2026年7月)
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