今日の一句 #515

よく知らない人だがまず蛸を食う  中内火星

蛸を食っているのはどちらだろう。
主人公か、「よく知らない人」か。
どちらであれ、他人にはどうでもいい光景。
なのにわざわざ十七音にカットされ
唐突に提示されることで、
俄然、なにやら特別になり
いきなり、読み手も渦中に巻き込まれてしまう。

蛸もぐもぐのこの一席。
一体、ここから何が始まるのだろう。


さて、今年10月、広瀬ちえみさんが編集発行人となって
「What’s」が創刊された。
本作はその創刊号、会員作品からの1句。


「川柳人だけではなく俳人も参加してくださいました。
お互いのジャンルを斜めから眺めているより、
ごちゃ混ぜの一冊になったら楽しいのではないかと
思いました。(創刊のごあいさつより)」


会員16名の作品20句とエッセイをメインに、
招待作家の樋口由紀子さんの作品や
叶裕さんの寄稿などで構成されている。

以下、会員作品より。

お姫さまだっこをしたが運のつき   水本石華
今しか見ないからずっと目がきれい  竹井紫乙
黄を長くする信号機の退屈      月波与生
借りものの身体かゆくてはがゆくて  佐藤みさ子
黙祷の時間長しよ水中花       川村研治
口さみしくてとらんぽりんぷりん   妹尾 凛
イケメン揃いマスクの理学療法士   鈴木節子
誕生日もうろうそくはいりません   鈴木せつ子
四分休符くらいのためらいはあった  浮 千草
七草のまだ柔らかく水を追う     野間幸恵
君だけを照らす太陽持っている    鈴木逸志
向日葵の首を並べてヘヴィメタル   加藤久子
出席をとります四季をなくします   兵頭全郎
虹つれてかえってくる子木曜日    高橋かづき
秋だわね総理が何と言おうとも    広瀬ちえみ  


今後は年2回発行予定とのこと。
「ごちゃ混ぜ」の中で、屹立し、響き合う個性が
魅力の新しい雑誌。

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