今日の一句 #521

もう一度回り始めた観覧車  久保奈央

止まった、終わった、と思っていた観覧車が
もう一度回り始めた。


閉園後の遊園地で?
遠い記憶の中で?

思いがけないごほうびのような一周は、
どんな景を見せてくれるのだろう。
いや、今度こそ永遠の夢として回り続ける?

なんて句を眺めていたら、
久しぶりに観覧車に乗りたくなった。

さても観覧車とは不思議な乗りものだ。
束の間、空までも運んでくれながら
必ず元の場所へ戻ってくる。

降りるときの、ほっとするような、あのせつなさ。
けれど、ビフォーアフターでは
自身の何かがいつも少し変化している。


出典は先月上梓された、
久保奈央さんの第一句集『Ferris wheel -virginal-』。
フリーアナウンサー、ラジオパーソナリティの
久保さんは4年前に川柳と出会われた。
透明感のあることばが、やわらかに沁みる。


 急な雨演歌の様に手をつなぎ

 裏返す洗濯物に星の砂 
 鳥瞰図わたしはここを歩いてる
 今はまだ因果が巡る地球に住む
 箱庭に音楽隊を置いてみる

(川柳句集『Ferris wheel -virginal-』久保奈央
私家版 2021年)

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