もう一度回り始めた観覧車 久保奈央
止まった、終わった、と思っていた観覧車が
もう一度回り始めた。
閉園後の遊園地で?
遠い記憶の中で?
思いがけないごほうびのような一周は、
どんな景を見せてくれるのだろう。
いや、今度こそ永遠の夢として回り続ける?
なんて句を眺めていたら、
久しぶりに観覧車に乗りたくなった。
さても観覧車とは不思議な乗りものだ。
束の間、空までも運んでくれながら
必ず元の場所へ戻ってくる。
降りるときの、ほっとするような、あのせつなさ。
けれど、ビフォーアフターでは
自身の何かがいつも少し変化している。
出典は先月上梓された、
久保奈央さんの第一句集『Ferris wheel -virginal-』。
フリーアナウンサー、ラジオパーソナリティの
久保さんは4年前に川柳と出会われた。
透明感のあることばが、やわらかに沁みる。
急な雨演歌の様に手をつなぎ
裏返す洗濯物に星の砂
鳥瞰図わたしはここを歩いてる
今はまだ因果が巡る地球に住む
箱庭に音楽隊を置いてみる
(川柳句集『Ferris wheel -virginal-』久保奈央
私家版 2021年)
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