花冠ひとりぼっちをまっとうす
蝶の黄も黒も奉納されにゆく
警報のうわずっている青葉闇
芳賀博子
ONとOFF彷徨っている春の海
野のベンチ花に埋もれている柩
青虫と分け合っている春キャベツ
林 操
それぞれの正義に神の声がある
この粉も思わせぶりにエアポート
独裁者が吠える怯えているらしい
飛伝応
太陽が笑うと月が泣き出した
撮る人も撮られる人も春まみれ
スギ花粉君の立場はよく分かる
平尾正人
カーテンの仕切り 8階の病室
四人部屋孤独地蔵の下がり眉
突然の電話 川柳のお友だち
弘津秋の子
風吹いてパイナップルも美の基準
教えているがドローンの二面性
ドクターのうすら笑いを黒く塗る
藤山竜骨
春キャベツが主役スーパーのチラシ
ツンツンに尖った緑浴びながら
春の憂鬱なかったように木の芽和え
峯島 妙
やわらかい空には向かい合う孔雀
草原の馬あざやかな布を着て
カフィル・カラ遺跡に満ちるサ行音
宮井いずみ
きみをかき集める指が削れても
日々忘れてくものたちをお願いね
ひさしぶり肩をゆるめて帰る夜
本海万里絵
わらびもち大事なことを言いそびれ
黄昏はミモザサラダになる予定
一切を不問に付して月の裏
森平洋子
肘ついて聞いてる振りで空見てる
それはそれ これはこれだと距離を置く
胸張って私らしさの始発点
森 廣子
霞立つ向こう遺失物センター
蛍烏賊そしてシュールな偏頭痛
まどろみの蝶と温室管理人
山崎夫美子
よく負けた街のまんなか刑事です
靴ずれのあるあたりから四国寄り
気を衒う全人類が補導中
山本絲人
ハンカチを忘れたなんて逢いに行く
バーベキュー俺のエプロン燃えている
全没がそんな悪いかほっといて
吉田利秋
暁に浮きいづる後悔のしっぽ
海が遠くて心ごと干からびる
月食の隙に国境越えてみる
四ツ屋いずみ
否定から肯定 闇を吸いながら
ありがとう唱えて朝を待つスミレ
闇底に花のひとみの礼拝堂
吾亦紅
ついに来た尿もれ講座ご案内
カタカタは聞こえないふり花の下
米はある卵もあるが夢がない
浅井ゆず
久方の茶筒のポンと朧の夜
遺言は反故にして良し昭和の日
花曇り着信無視と決め独り
朝倉晴美
二階建ては忍者屋敷を夢見てる
壁紙のムーミン谷は置いていく
カーテンに閉じこもってるスヌーピー
石野りこ
眼球の中でキノコが闊歩する
視界からはみ出す空は美しい
泣きましょう裸眼の僕になってから
伊藤良彦
朝焼けの定位置でまた夢未遂
若い声無限の時が歯を見せる
掃き終えた今日の塵から芽吹く明日
稲葉良岩
打楽器は深いしじまをいちず編む
富士山をみせる車窓にめぐり逢う
そのように白い小皿であらんとす
岩田多佳子
アネモネは強気ときどきキュンと恋
未練まだダリの時計のいびつさよ
知らぬ間に涙のあとが光りだす
海野エリー
おっぱいに嫉妬している春キャベツ
くださいなわざわざ愛したチューリップ
分別中置いてありますチューリップ
おおさわほてる
平和だねパフェに唐揚げ乗せちゃって
掃海艇ブルーウェーブはラムネ味
曼陀羅でくるんで渡す春キャベツ
大竹明日香
閉じようとすると引き留めてくる手記
のほほんと溶け残ったら勝ちの春
未使用のままのこころに五月風
小原由佳
形代を乗せれば速し花筏
終止符を打つたびアスパラが伸びる
七合目あたりで風を読み直す
笠嶋恵美子
帰路のアクセルはシンデレラの足で
張りぼての鎧を脱いで初夏を待つ
哲学書に勝る老猫の歩幅
桂 晶月
花曇り時時転ぶ介護ロボ
かたかったかったミシンを踏んでいた夕陽
フィナーレが近づく羽根を縫い付ける
川田由紀子
弟は急な故障の湯沸かし器
餞にバンドエイドとラーメンと
雨雨雨雨雨雨痛雨雨
河村啓子
あの通りをもう歩くことはないのかなあるのかな心斎橋の
ごめんねとかありがとうとか辞書になかった
かきむしる忘れてしまうどっちもね
寒雷
トビウオのコントのオチを聞き逃す
充て職の舌先を研ぐ水二滴
躓きが溶ける冷めた珈琲で
菊池 京
春蘭の雨を集めた沼でして
急坂を転がるさなか蘭は金銀
鷺草の知ってか知らねか鳥の行方を
北川清子
花筏 敗者復活戦求む
猫バスが発車するから急ぐ春
「お米券」届く玄関 菜種梅雨
黒川佳津子
地平線切り取るロールスクリーン
体内の水位測りにくる五月
天体の破片も編んで鳥の巣に
黒田弥生
想念は別腹グミはさくら味
剃髪のカール・フィリップ・エマヌエル・あっバッハ吉原の夜桜パイクカーにはなれなくて
河野潤々
行き当たりばったりへ反転したり
男気のある冷蔵庫のグリップ
片栗の花は繋ぐの代名詞
斉尾くにこ
春に咲く花は花粉を持っている
烏賊光るオープン戦の二試合目
ひゅるひゅると泣く春の音の取り方
重森恒雄
コンパスのむすめの頃は春きゃべつ
甘くするためにお匙を忘れます
エプロンに罪は無いけど黒にした
下野みかも
重いなあ雨傘で受け続けた女
しあわせの両面テープ剥がされる
家族からブラックホールひろがる
芝岡かんえもん
前髪を切り揃えられ新学期
春なので電動歯ブラシ眠ります
桜をくぐる同じ書店のカバー
島貫麻衣子
やっかいな二人だ 砂時計止まる
北帰行 北ばかり向く風見鶏
辛夷咲く老いた私に逢いたいか
杉山昌善
海は春呼吸のように波の音
春光に影はさざなみうちながら
春やけんいい加減息せんとねぇ
たかすかまさゆき
あたためますか 昭和百年
納豆百回そんなに生きていたいのか
行き先を聞いてはならぬ深夜バス
浪越靖政
花びらを重ねるほどに淡くなる
ブリッジで繋ぐ奥歯とハナミズキ
鼓膜ひとひら紛れ込んでる花吹雪
西田雅子

