今日の一句 #522

ふるさとを広げてみれば星の村  山崎夫美子

ニュースでは「2年ぶりの帰省ラッシュ」の映像。
オミクロン株も気になりつつ、
この年末年始は、久しぶりにふるさとで
家族とゆったり過ごす人が多いそう。

一方で、それどころではないという
街頭インタビューの声も。

ふと、掲句が浮かぶ。
「ふるさと」はリアルな故郷であってもいいし
誰しものこころのふるさと、
はるかなる原風景のようなものと
とらえてもいいだろう。
口ずさめば、いつだって

その懐かしい地へ帰ることができる。

本作は山崎夫美子の第一句集『葉桜の坂』より引く。

双塔のどちらに傾く雪の夜は
托鉢の椀の深さを知るさくら
山焼きに染まる仏の体温も
蝶追えば蝶の柩となる帽子

大仏の影でぬくぬく子を育て

古都奈良の折々の景や歴史的時間も

繊細にダイナミックに織り交ぜながらの
山崎夫美子ならではの川柳の数々。

『葉桜の坂』は2015年に発行され、
全日本川柳協会が主催する「第9回川柳文学賞」正賞を受賞。
また山崎さんは「第25回川柳Z賞」、
すなわち伝説の「川柳Z賞」最後の大賞受賞者であり、

そして現在、「ゆに」の編集委員として
作品発表はもとより、
さまざまな記事をアップ中です。


(句集『葉桜の坂』山崎夫美子/新葉館出版)

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