新春の稲穂しあわせいろきいろ 森山文基
新年早々、森山文基さんの第二句集『にいな』が上梓された。
本書は、第一句集『せつえい』以降の
2020年、2021年に詠まれた未公開句から153句を収載。
だから全作近作、といっていいようなホットさだ。
「新春に稲穂」とは、
たとえば稲穂のしめ飾りとか、地方の風習とか。
と思い描く絵に、豊かな実りの景が広がってゆく。
続いて、しあわせいろ、きいろ、と
平仮名がふっくらやわらかに連なり
句はとてもシンプルな仕立て。
ゆえに沁み入る。
さても新年の願いとは、
ごくシンプルで、切なもの。
ことにこの緊迫の世にあっては。
森山さんは沖縄在住。
コロナ禍の医療現場で働き、
句集には、そんな氏の「いま、ここ」が伺えつつも
それとは別に、表現者としての
実験性に富んだ作品も興味深い新刊です。
透き通る世界の端にさんぴん茶
検索にかかった豆を踏み潰す
再検通知碧の海の封筒で
替え歌の方がしんみりする浜辺
おとうさんにいなほんとはみどりだよ
(『にいな』森山文基句集
/川柳本アーカイブ 2022年)
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