遠のいてゆく「わ」卓球しませんか
守田啓子
「わ」。
ってなになに。
ぽっと浮かんだ漢字が「輪」。
続いて、遠のいていく友だちの輪の映像。
他にどんな「わ」が、と手元の辞書をみると
曲、回、環、羽、把、和、倭、話、我、吾。
あるいは終助詞の、
「よく言うわ」「あら素敵だわ」のような、わ。
感動詞の、
驚いたときや驚かすときに発する、わ。
はたまた、わ、という名字。
あだ名の、わ。
と、いずれであっても、読みは成立する。
けれど、ただシンプルに
平仮名でカギカッコ付きの「わ」に
なにものにも変換できないような存在感がある。
そこへきて唐突な、「卓球しませんか」。
呼び止めるにしても、なんでまた卓球か。
どこか間の抜けたひと言に
慌てぶりや切迫感がにじんでいて、
可笑しくも切ない。
そしてふと、
遠い我が青春のひとコマと結びついたりする。
(川柳作家ベストセレクション
『失った深さを埋めるように 雪』守田啓子
/新葉館出版 2018)
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