Vol. 65 踏 切

 子供の頃、道を隔てて電車が通っていた。そばには踏切があって、電車が通る度に、踏切の警報機が、カンカンカン…と鳴った。私はその音が好きで、夜は、子守歌のように聴きながら眠っていた。

 「踏切」は、「踏切道」の短縮形で、「鉄道を横切る(部分の)道」という意味で、使われていた。「踏切」と呼ばれるようになったのは1870年代の末頃で、それまでは「横路」や「横切馬車道」などと称されていた。

 現在では、警報機や遮断機等の保安設備をセットで「踏切」という。

 昭和33年頃には、自動化された踏切遮断機が登場。が、私の子供の頃は、踏切の向こうに小学校があり、まだ「踏切番のおじさん」がいて、電車が通る度に、手動で遮断機の上げ下げをしてくれていた。

 時代と共に、警報機の音も変わり、今ではカンカンカン…と鐘を叩く音から、ポンポンポン…という電子音に変わったらしい。ポンポンポン?、音量を調節できることから、住宅街では音を小さくしたり、遮断機の降下中と降下後で音量を変化させることもできるらしい。
 はてして、ポンポンポン…で気持ちよく眠ることができるだろうか。

  食べおえてわたしに踏切が増える  平岡直子