朝刊を開けばパンがまた焦げる
岩渕比呂子
ごく日常のなんでもない一シーンが
シンプルに切り取られている。
とっても切れ味のいいハサミで。
世の中の新聞離れが指摘されて久しい。
ニュースはスマホでささっとチェック派も増える中、
主人公は、毎朝、丁寧に新聞に目を通す派のよう。
社会面、政治面、文化面、地域面・・
いろいろに、ふむふむ、うむうむと。
そんな丁寧が、さらりと素敵だ。
ついまたパンを焦がしてしまったのは、
昨今、読み飛ばせない大事件が続いているからか、
あるいは根っからの活字好きなのか。
掲句のこのユーモア仕立てもいいなあと思う。
たった一シーン、たった十七音に
暮らしやキャラクターが息づき、
さりげなく時代や社会も映り込んでいる。
(「触光」75号/川柳触光舎 2022年9月)
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