作家の人生の物語に迫る
学芸員の仕事を伺い
惹き込まれました。
10月10日(祝・月)、姫路文学館の学芸員 竹廣裕子さんをお迎えし、「文学館とことば」をテーマに第5回ゆにゼミを開催しました。
第1部は、竹廣裕子さんのお話。姫路文学館で行っている仕事(資料の収集・保存、教育普及活動、展示、研究)のなかで、とくに展示に焦点を当ててお話ししてくださいました。竹廣さんが展示を担当したとき必ず行っているのが、その作家が暮らした場所を訪れ、歩いて回ること。たとえば、「川柳作家 時実新子」の企画展では、時実新子が生まれ育った岡山の村から辿られました。嫁ぎ先の姫路市鍵町を訪ねた際には、家の裏に続く拘置所の長くて高い塀を見て、「長い塀だな 長い女の一生だな」という代表作の原風景ではないかと思い至ったそうです。そうした小さな発見を積み重ね、心に迫ってくる「情」を感じながら、作家の人生を追っていくと、それぞれの物語が見えてくる。それを展示のストーリーに展開させることで、来館者の心に響くものへと仕上げていくそうです。そのほか、これまで展示を担当し、ライフワークともいえる仕事になったという「歌人 岸上大作」「俳人 永田耕衣」「作家 車谷長吉」のエピソードも印象深く、あっという間の1時間でした。
第2部は、「白」の題で事前投句していただいた川柳の句会。まずは互選方式で、参加した皆さん全員が、それぞれ「心つかまれた句」を2句ずつ発表。つづいて、選者(ゆに会員・平尾正人さん ゆに編集委員・山崎夫美子)の披講。驚いたことに今回は、選者二人の選んだ作品が一句も重なることなく、それぞれの評価軸の違いも興味深い結果となりました。
なお今回は初めての試みとして、ゆにゼミの閉会後、30分ほど希望者によるおしゃべりタイムを設け、句会の余韻を味わいました。
当日の入選句です。
第5回ゆにゼミ 句会【白】入選句
◆平尾正人 選 | |
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履歴書の余白が僕の未来です | 伊藤良彦 |
白ですがあなたの白と違います | 浪越靖政 |
談合を抜け出て白は白のまま | 藤山竜骨 |
泣き虫に魔法をかける天花粉 | 峯島 妙 |
特選 | |
削られてそれから白くなる氷 | 伊藤良彦 |
◆山崎夫美子 選 | |
バスを待つ秋の余白の中にいる | 西田雅子 |
花嫁の白それからの十二色 | 弘津秋の子 |
あなたの白目きれいねという老婆 | 山中広海 |
採血は知らず白イカ透きとおる | 斉尾くにこ |
特選 | |
ありがとねモフモフだった白い骨 | まつりぺきん |
【白】 互選 | |
空白を重ねるうちに秋である | 浅井ゆず |
真っ白を求めゆるりと時計剥ぐ | 小原由佳 |
白い襟つけて三角錐になる | 河村啓子 |
履歴書の余白が僕の未来です | 伊藤良彦 |
白ですがあなたの白と違います | 浪越靖政 |
バスを待つ秋の余白の中にいる | 西田雅子 |
あの日から視野に住みつく白い鳥 | 山崎夫美子 |
白旗もゆらゆら紛れこむ祭 | 芳賀博子 |
飛び立てるように大きく取る余白 | 平尾正人 |
泣き虫に魔法をかける天花粉 | 峯島 妙 |
真っ白いキャンバス文系もいいね | 河野潤々 |
削られてそれから白くなる氷 | 伊藤良彦 |
幸福だ検査が白と出るだけで | 浅井ゆず |
画用紙と白いクレヨン渡される | 西田雅子 |
歯磨き粉落ちた胸元から汽笛 | 菊池 京 |
あなたの白目きれいねという老婆 | 山中広海 |
立ち位置はグレーゾーンのやや左 | 浪越靖政 |
真っ白な画面が出たときの対処 | 芳賀博子 |
トラックの白線トンボ走り抜け | 森平洋子 |