ト書きにはポップコーンを食べるとある
高鶴礼子
はい。まさに今、ここ、この場面ね。
ポップコーンを無邪気に口に放り込む。
ぽいぽい、ぽい。
ああ、やめられない、とまらないのは
ただ何となくではなくて
ト書きにあるから。
茶番劇だとわかっていても
与えられた役回りは忠実に演じるしかない。
と、そんな、しぶしぶの気分を
下六の字余りが醸し出す。
一方、初デートだったらどうか。
たとえば映画館。
恋愛に長けた友人のシナリオどおりに
カップのポップコーンを分け合って・・
といったシーンなら、緊張ゆえの下六とか。
さてもポップコーンとは
なかなかに物語る具象なり。
(川柳集『向日葵』 高鶴礼子
編集工房 円 1999)
過去ログはこちらから▶