今日の一句 #568

髭を呼ぼうか髯を呼ぼうか迷う
藤山竜骨


髭も髯も、どちらもヒゲながら
「髭」はくちひげで、「髯」はほおひげ。
さあ、この危機にどちらを助っ人に呼びましょう。

ひげ面のむくつけき輩、
なんて定番の言い回しがあるように
きっと二人ともマッチョでワイルドで頼もしいはず。

いや・・だとしたら、迷ったりしないか。
勝手な想像ながら、

どうもこの髭氏も髯氏も見かけだおしで、
ここぞというときにひるんでしまう優男っぽい。
でも、いいヤツには違いなくて、

だから主人公ともウマが合うんでしょう。
ここはもう、いっそ二人とも呼びだして
まずは、いつものおでん屋でしんみりと、
もとい、意気揚々と作戦会議などいかがですかね。
このトリオならまた、

「なんとかなるか」の妙案が浮かびそうな気がします。

さて本作は、発行ほやほやの句集『弾き語り』より引きました。
ゆに会員でもある藤山竜骨さんの、待望の第一句集です。


 まっさらの水に合掌してしまう
 くすり屋を畳み選対委員長
 狼をはじく求人誌のメニュー
 地球儀を撫でる賢くなるように
 日傘くるくるおじさんも街をゆく

愛と反骨とユーモアと、そして含羞と。
なんだか「おじさん」の意気に加勢したくなって、
髭氏髯氏に続き、

私もおでん屋に参上するとします。


(『令和川柳選書 弾き語り』 藤山竜骨/新葉館出版 2022)

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