旅人のどこか埴輪に似て帰る
山崎夫美子
埴輪はごくシンプルなつくりゆえ、
いろんな表情にみえる。
ぽっかりあいた目と口で
笑っているような、驚いているような、
はたまたすべてをないまぜにして
ふっと虚無をつきつけてくるような。
そんな埴輪に似て帰る旅人。
と書かれると、確かに
旅人もまた、埴輪のごとく
果てなき時空を旅し続けているかのよう。
そして私たちもまた。
作者の山崎夫美子は「ゆに」編集委員。
奈良県に生まれ育ち、
古都に育まれた感性で、
繊細に、ダイナミックに
ロマンチシズムあふれる川柳を詠み続けている。
初恋のときめき阿修羅に辿りつく
托鉢の椀の深さを知るさくら
うっすらと海を憶えている仏頭
ところで、ただ今発売中の
「月刊 川柳マガジン」3月号では
巻頭で「山崎夫美子特集」が組まれ、
作品と論がたっぷり紹介されています。
夫美子ならではの作品世界をどうぞ。
(句集『葉桜の坂』 山崎夫美子/新葉館出版 2014)
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