今日の一句 #584

生乾きのまま畳まれてゆくニュース
鈴木節子


畳まれてゆく、にアナログ感がある。
ああと吐息をつき、割り切れない、

いかんともしがたい思いで
新聞が畳まれてゆくような。

生乾きのままなのは
ニュースひとつひとつであり、
作者の心情でもあるのだろう。

そのウェットに生身の人間の存在が感じられる。

以下もこの3月1日に発行された
季刊「触光」最新号の作品。

 黒い絵を棄てて球根買いにゆく   木本朱夏
 物価高オーケストラが揃わない   船水 葉
 蚤の市鏡の傷に立ち止まる     小野善江
 鬼としてコメントをする立場では  まつりぺきん
 つくづくと塩の加減がわからない  野沢省悟



(「触光」77号 川柳触光舎 2023年3月)

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