桜咲く浮かれてるのが母の墓
滋野さち
遠くからでもすぐわかる。
まったくなに浮かれてんだか。
相変わらずだねえ、
なんて口元ゆるめながら
自身もまた、桜に浮かれているよう。
生身でなくとも、母は健在。
墓に語りかければ、うなずいて、よく笑って。
そんな母とともに、今年の桜を愛でている情景が
ほろ苦くあたたかい。
ああ、川柳だなあ。
句集『オオバコの花』には
滋野さちならではのユーモアとペーソス、
骨太な批判精神に裏打ちされた
魅力的な作品が数々収録され、
わが愛誦句もたくさん。
一本の棒も持たずに来た岬
おしゃかさま団子が丸くなりません
賞罰がなくてシロツメクサがある
糸を吐くうちはカイコの白無限
(句集『オオバコの花』 滋野さち/東奥日報社 2015年)
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