今日の一句 #585

桜咲く浮かれてるのが母の墓
滋野さち


遠くからでもすぐわかる。
まったくなに浮かれてんだか。
相変わらずだねえ、
なんて口元ゆるめながら
自身もまた、桜に浮かれているよう。


生身でなくとも、母は健在。
墓に語りかければ、うなずいて、よく笑って。
そんな母とともに、今年の桜を愛でている情景が
ほろ苦くあたたかい。
ああ、川柳だなあ。


句集『オオバコの花』には
滋野さちならではのユーモアとペーソス、
骨太な批判精神に裏打ちされた
魅力的な作品が数々収録され、

わが愛誦句もたくさん。

 一本の棒も持たずに来た岬
 おしゃかさま団子が丸くなりません
 賞罰がなくてシロツメクサがある
 糸を吐くうちはカイコの白無限


(句集『オオバコの花』 滋野さち/東奥日報社 2015年)

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