Vol. 112 桃 

 モモの語源には「真実(まみ)」が転じたとする説、実が赤いところから「燃実(もえみ)」、実が多くなることから「百(もも)」、「実々(みみ)」が転じたとする説、毛が生えていることから「毛々(もも)」の意味など、十数種類の説がある。

 漢字「桃」の「兆」は左右二つに割れるさまを表し、「木」+「兆」で実が二つに割れる木を意味している。

 現在の桃のルーツは、中国に自生していたと考えられ、中国における桃の栽培の歴史は古く、紀元前6000年頃とされている。古代中国で、桃は邪気を祓い不老長寿を与える神聖な植物と信じられ、桃を食べた人々に長寿や不死を与えるとされていた。

 日本に中国から桃が伝わったのは、縄文時代以前とされている。果物としての桃の地位が高まったのは、明治以降。それまでは、鑑賞用植物や生薬としての栽培がメインだったようである。

 明治以降、中国(清国)から、甘みの強い水蜜種系の品種が導入され、果肉の色によって、更に白桃系統と黄桃系に分けられる。明治32年に岡山で新品種”白桃”が生まれ、様々な日本特有の桃の品種が作られていく。

  どこまでが夢の白桃ころがりぬ  時実新子