今日の一句 #604

賞品にポテトチップス貰う亀
小野多加延


素直に喜んでいるんだと思う。
ちゃんとゴールを切ることができたもんね。
賞品がポテトチップスだから、

上位入賞にはほど遠く
ほとんど参加賞に近いけど、タイムではないのだ。
だから兎くんの順位も気にならないし、
きっとこのポテトチップスは
いつもよりさらに美味しい。


掲句、「亀」を自覚するペーソスや可笑しみを湛えつつ、
自分なりにがんばって、

ささやかなご褒美をゲットした
汗と笑顔がキラリ、キラリ。

出典は小野多加延さん(1920-2015)の句集『とうがらし』。
あとがきによれば、定年退職後に姫路のカルチャー「時実新子の川柳教室」に入門。
以来「今日まで三十年近く川柳を続けてきました」という氏の第一句集には
樋口由紀子さんが序文を寄せ、
今もページを開くたび、

飄飄として、やわらかに沁みわたる句がたくさん。

 ばあさんを置き去りにして蛍追う
 残党も三人になる電話口
 借りてきた色鮮やかな傘を干す
 跳んで来た秀吉に似た虫の貌
 今吊った棚が傾くああ夫婦



(句集『とうがらし』小野多加延 私家版  2010)

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