賞品にポテトチップス貰う亀
小野多加延
素直に喜んでいるんだと思う。
ちゃんとゴールを切ることができたもんね。
賞品がポテトチップスだから、
上位入賞にはほど遠く
ほとんど参加賞に近いけど、タイムではないのだ。
だから兎くんの順位も気にならないし、
きっとこのポテトチップスは
いつもよりさらに美味しい。
掲句、「亀」を自覚するペーソスや可笑しみを湛えつつ、
自分なりにがんばって、
ささやかなご褒美をゲットした
汗と笑顔がキラリ、キラリ。
出典は小野多加延さん(1920-2015)の句集『とうがらし』。
あとがきによれば、定年退職後に姫路のカルチャー「時実新子の川柳教室」に入門。
以来「今日まで三十年近く川柳を続けてきました」という氏の第一句集には
樋口由紀子さんが序文を寄せ、
今もページを開くたび、
飄飄として、やわらかに沁みわたる句がたくさん。
ばあさんを置き去りにして蛍追う
残党も三人になる電話口
借りてきた色鮮やかな傘を干す
跳んで来た秀吉に似た虫の貌
今吊った棚が傾くああ夫婦
(句集『とうがらし』小野多加延 私家版 2010)
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