今日の一句 #610

絶壁に来てほんとうの眼を開ける
井上剣花坊


いよいよ追い詰められて、
やっと「ほんとうの眼」を開ける。
ほんとうの眼とは、
誰より自身に向かって開けられるべき眼か。
さてどんな風に開けているのだろう。
こじ開けるように、
あるいはふっと、われ知らず開いたようにも。

明治3年生まれの剣花坊の一句が、
しぶきとともに、わが眼前にも
絶壁の景を広げる。

「川柳中興の祖」の一人、井上剣花坊(1870-1934)は、
1903年、新聞「日本」に「新題柳樽」欄を設け、
2年後には「川柳」を創刊。

1912年に「大正川柳」、1927年に「川柳人」と改題。
その「川柳人」は現在、佐藤岳俊氏が編集発行人を務め、
来たる9月16日(土)には、恒例の顕彰行事も開催される。

「鶴彬没後85年
 第47回鶴彬・井上剣花坊祭」
場所は盛岡市光照寺の鶴彬川柳碑前。
主催・川柳人社、後援・岩手県川柳連盟。
懇親会では佐藤氏によるお話「鶴彬と井上剣花坊」もあり、
こちらの会場は「旨いそばの橋本屋」。

(『近・現代川柳アンソロジー』
桒原道夫・堺 利彦 編 2021年 新葉館出版)

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