Vol. 152 空

 春の空はぬけるような青ではなく、どこか憂いのあるような色の空。
心に空の色が映り、春愁気分になるのかも。

 「空」の字を解体すると、「穴」と「工」になる。穴倉の入り口を示す象形文字「穴」と、
のみ等の工具を示す「工」が組み合わさった漢字である。
「工」は上下2本の線の間を1本線が通っている「突き抜ける」というイメージ。

 また、「工」という字は、ゆるく弓状に曲がった形のものを示すことがあり、
そこから、穴の上部が曲がったドーム状の形を表したのが「空」という字に。
もとは「穴」そのものを意味していた。

 洞窟の空間に工具を突き通しても何もないという意味で「から」。
頭上にある「そら」も何も実態のない「からっぽ」。

 昔の人たちは、「空」という字を、頭上にある大きな「からっぽの穴」から神々が舞い降り、
雲や雷が出てきては消えてゆく「穴」として、“そら”に使うようになった。

 空に帽子かけて 忘れたままでいる  酒谷愛郷