旅慣れたみどりの布についていく
暮田真名
旅慣れた、みどりの布に、ついていく
・・するすると展開して物語へ誘われる。
旅慣れた、ときて
最初に浮かんだのは、フーテンの寅さん。
みどりの布、ときて
唐草模様の風呂敷を連想するも
寅さんが提げていたのはトランクだった。
さて、みどりの布って。
読み手によって思い描く色合いも質感もさまざまだろう。
けれどその褪せ具合も、くたびれ加減も
なんとも味のある「みどりの布」には、
世代や時代を問わず
すべてを包みこんでくれるような
あたたかさが感じられる。
そしてきっと、いつか別れるときには
さらりとたなびいて、
ただひと言、じゃあ、のような。
そんな先の風景まで想像されて
作品の余韻にせつなく優しい風が吹く。
出典は、短詩集団「砕氷船」のユニット誌「詩IA」。
「砕氷船」は
暮田真名さん(川柳)、榊原紘さん(短歌)、斉藤志歩さん(俳句)と、
三つのジャンルの気鋭の書き手が集まったユニットで、
本誌では作品の他に、鑑賞やエッセイ、座談会なども収載。
それぞれのジャンルの違いや魅力について
フレッシュな気付きを得られる一冊。
桃の葉が風に鳴りいる午睡明けついに読まざり君の日記は 榊原紘
冷し酒がちやりがちやりと運びて来 斉藤志歩
合鍵のほうが本物みたいだよ 暮田真名
(「詩IA」砕氷船 2024年5月)
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