囲まれてしまい古池からあがる
蔭一郎
なになに!? と、取り囲むヤジ馬に私も加わる。
ついに伝説が正体をあらわすのだ。
その姿はたとえば河童風かネッシー風か。
あるいは、と、つと芭蕉翁の「古池や」の一句よぎり、
もしや、かの蛙が三百年以上もの潜伏を経て
ザバリと令和に甦るのか
・・などとついまた、想像妄想を暴走させつつも、
本作、主体はあくまでも「あがる」方である。
その心情を思うと、そこはかとなくせつない。
穏やかに暮らしていた聖域に土足で踏み込まれ、
姿をあらわすしかなくなったのか。
それは、自然の摂理のようなものが
ほころびることやもしれず、
作品の背景に、「もののけ姫」の世界観なども重なって。
今日の一句は、「現代川柳 満天の星」第5号から。
本誌は年2回の発行で、発行人は月波与生さん、
編集人は真島久美子さん。
この最新号より「川柳の話」から誌名を変更、
さらに読みごたえたっぷりです。
(「現代川柳 満天の星」第5号/満天の星社 2024年10月)
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