旅―たび、の語源には諸説あり、1つは旅は元々地の物を食べて回ることなので、「食べる」がなまって「たび」になったというもの。地元を離れて「他の日々」を過ごすことから「他日(たび)」になったという説をはじめ、歌人西行に憧れた松尾芭蕉が辿った奥の細道が、旅の由来とされて、「辿る」がなまって「たび」になったというもの等々。
古くは、遠い土地に限らず、住居を離れることすべてを「たび」といった。
「旅」という言葉は、『万葉集』にも登場するが、一般の人々が旅に出ることは稀で、特別な目的がなければ旅は避けられていた。僧侶が修行のために山岳を巡ったり、商人が商取引のために遠方へ出向くことが主な理由で、庶民が旅行に出ることはほとんどなく、旅はまさに命がけの行為だった。
江戸時代に入ると、インフラが整い始め、現在のような「旅行」という文化が広まった。五街道(東海道、中山道、甲州街道、日光街道、奥州街道)が整備され、宿場町が発展したことで、旅の安全性が向上した。
旅ひとり仁王の口を真似てみる 森中惠美子