青だった頃を覚えているインク 久保田 紺
古い手紙かハガキなど
読み返しているんだろうか。
青いインクで書かれた親しみのある文字。
いや、文字は
もうすっかり色あせているけれど
目で追うほどに
当時の青でよみがえってゆくよう。
さて差出人は誰だろう。
今の相棒、あるいは
かつての恋人か、親友か。
そこは読み手にゆだねられつつ、
あの頃のふたりもまた、
きっと輝いていたんだ。
海のように、空のように
無限の青で。
本作、思いをインクに託した点が眼目。
時が移ろうことで、
むしろ記憶の一部は鮮烈になるのかもしれない。
ゆえに懐かしさもせつなさもいっそう。
(句集『銀色の楽園』久保田 紺/あざみエージェント)
過去ログはこちらから▶