当たり前過ぎる返事へ向き直る
小林康浩
向き直り、さて。
と、展開が寸止めされていることで、
この先が読み手の中で自由にふくらんでゆく。
たとえば相手がパートナーや親友だったとして、
どんなひと言を返すのかな。
それとも、ちょっと肩を落として吐息ひとつ、とか。
返事が単なる「当たり前」でなく、
「当たり前過ぎる」に、主人公の屈託が込められている。
今そんな返しがほしいんじゃないんだよ、って。
じゃあ、どんな言葉が欲しかったんだろう。
なんて、もどかしい1シーンながら、
「向き直る」がいいな、とも思った。
つまり二人が、今、ここにいるということ。
そして堂々巡りしたり、黙りこくったり。
秒で出てくるAIの最適解と比べると
なんとも非効率なひとときながら、
そういう時間からも小さなドラマが芽生えゆく。
(句集『どぎまぎ』 小林康浩 私家版 2020)
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