今日の一句 #525

澄み切った独楽の二つが触れんとす   田中五呂八

緊迫の一瞬。
触れればすなわち体当たり。
小さな独楽と独楽、
されどまるで邪念のない魂そのもののような
二つがカツンと火花を散らせば、どうなるか。
一巻の終わり、あるいはひょっとしたら
その火花で世の閉塞をブレイクスルーできるかも。


さて、このほど『近・現代川柳アンソロジー』

(桒原道夫・堺利彦 編)が、出版されました。
明治から現代にいたる川柳作家300名のアンソロジー。
各作家の代表作25句とプロフィールが、生年月日順に収載されています。


たとえば掲句の作者・田中五呂八は新興川柳運動の旗手。

本書のプロフィールには

たなか・ごろはち
(一九八五・九・二○~一九三七・二・一○)
一九一七年から川柳を始める。
一九年頃から「大正川柳」に投句。
二三年「氷原」創刊。近代川柳の確立を主張して〈新興川柳〉と命名。
編著に『新興川柳詩集』(二五)、著書に『新興川柳論』(二八)。

そして掲句を含む代表作が1ページにまとめられ、
とても見やすい、読みやすい、おもしろい。


こんな風に、明治の川柳中興の祖・井上剣花坊と阪井久良伎から
新興川柳、六大家、革新運動など
さまざまな時代を経て、そして現在にいたるまでの句群。

アンソロジーとしての魅力もさることながら
近・現代川柳史の流れがわかりやすく整理され、
本書で、きっと文芸としての川柳を
新たな視点から楽しむことができます。


(『近・現代川柳アンソロジー』
桒原道夫・堺 利彦 編/新葉館出版)

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