今日の一句 #550

数学の先生だけが滑る廊下
真島 芽


先生、また滑った。
その瞬間、主人公のココロはどう反応したのかな。
「お気の毒」なのか、

「ちょっといい気味」なのか。
あるいはこの校内の怪現象を
ただ単純に面白がり不思議がっているだけかも。


下六の間延び、続いていく感じは、
長い廊下や、思春期のかったるさも
物語っているよう。

そういえば、こんな廊下がわが母校にもあった。
いや、なかったけど、

あったあった、って懐かしい。

作者は現在高校1年生で、

出典は先ごろ発行された「川柳の話」第3号。 
姉の高校3年生、真島凉さんとともに

連作を発表している。

 グランドにまだ青春と呼べるもの  真島 凉

本誌は一昨年、発行人・月波与生さん、
編集人・真島久美子さんの二人柳誌としてスタート。
年1回発行で、多彩なゲスト執筆陣の

作品や論やエッセーで構成され、
第3号の特集は「細川不凍を読む」

自選五十句にはじまり、新たにさまざまな角度から
「細川不凍」にスポットが当てられている。


 褒めたもの叩き落として姉になる  真島久美子
 理不尽を笑って食べている家族

 名画座は海が生まれる街にある   月波与生
 放蝶やみないさましく倒叙せよ    

ちなみに、以前にもふれましたが
真島凉さん、芽さんは、真島久美子さんの姪御さんで、
ゲスト作家ながら創刊号より作品とエッセーを寄稿。

久美子さんからの
「今の自分の等身大の句を飾らずに作って」という
難題に毎年向き合っておられるもよう。
その一年一年の作品を味わえるのも
本誌のお楽しみのひとつ。


(「川柳の話」第3号 2022年7月)

    

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