私への批判無視よりありがたい
物干しのこんな意外な使い方
どの道を抜けても同じ場所に出る
平尾正人
人間もバスも引き算山の町
地球から離れていった青い鳥
婆さまは固定電話を拭いている
弘津秋の子
抜け道の原子はきっと夏なんだ
遠回りしたって橋を渡りたい
ブックカバー断るさよならが言えそう
藤田めぐみ
遠花火二人暮らしを噛みしめる
老々介護どちらも穿いているオムツ
右折して左折ちょっと冒険家になった
藤山竜骨
酷暑にも只立ち尽くす向日葵や
先斗町夕立ぬってシャミの音
だいすきです妻そのもののヒメジョオン
堀本のりひろ
柱状節理ハズレばかりのあみだくじ
まっいいか裏側だもの夏だもの
青空になれとウクレレ飛ばす空
宮井いずみ
寝たフリのままであなたは星になり
流れ星心の地図を塗り替える
黒揚羽拝む象で蜜を吸う
もとこ
好きだったものを数えていく儀式
いってきますほんの少しの元気出る
ぴりぴりとするソーダ水沈んでく
本海万里絵
SOS解読してからの疎遠
その代わりティアラの花を摘みました
月明かりなくした眉毛うかんでる
森平洋子
潮騒が覚悟のほどを聞きにくる
刻まれたあの日を映す遠花火
仏足石に触れる炎暑の罪深く
山崎夫美子
セカンドオピニオン 悪くなってもよくならず
去ったのはカネと自由と筋肉と
多発する返信してというメール
吉田利秋
裏の顔見せたあなたはこの辺で
夏時間両手でぐるるんと回す
あのままずっと居たかった今朝の夢
四ツ屋いずみ
山頂のこもれび たぶん二人分
ゆっくりと荒縄ほぐす暮らし方
たましいも柳絮も明日も風にのる
吾亦紅
とんそくのチョキ整列す熱帯夜
生き物が食べ物になる立ち往生
手づかみでしゃぶりつくしてる無垢の域
阿川マサコ
異論ありまして鳴かないホトトギス
夏空がこびりつくのはダリのせい
狩りもせで皆ご一緒にチャウチュール
浅井ゆず
カレーいえ加齢親友会の楽しさよ
飛び込んで生まれ変わるわアマゾン河
ズンバ好き大和麗し赤ワイン
朝倉晴美
沈黙が冷やし中華と混ざり合う
ただじっと耐えているのも生きる価値
セメントが固まるまでの恋でした
伊藤良彦
ジャムセッションおわる西瓜が熟れました
種ぷっと宇宙ステーションの横を飛ぶ
望郷の犬の首輪だけがのこる
岩田多佳子
「いいえ」にチェック自立しているはずですが
笑顔の会釈どしゃ降りが許せない
目薬が効かない胸底のケモノ
海野エリー
向日葵と君の唇歌ってる
カタツムリ僕のただいま待っている
日が落ちる直立不動の百合を見る
おおさわほてる
無音だけひびく古事記のみことのり
テロップをながれながされ不帰の客
文月へふっと息して花ひらく
落合魯忠
聞き捨てる給湯室のゴミ箱と
立ち読みの人に灯っていく光
手の甲に風を感じている「確か」
小原由佳
飛ばされた帽子に尾ひれついている
当選を果たした薔薇に棘が無い
たっぷりの蜜で育てたズッキーニ
笠嶋恵美子
髪の毛が絡まっている虹の端
盗まれたサドルのような月が出る
一箱は桃で一箱は涙
川田由紀子
三足す四なんだか薄暮なんですよ
人間の都合で四角四面の月
自転車で運ばれてきた物語
河村啓子
メトロノームに急かされているアミダくじ
泣けるだけ泣いてジグザグのハンカチ
ひとり席木綿豆腐なばっかりに
菊池 京
けらのなきがら短夜の片隅に
カアカアと鳴かれミュートしとく
東京に行って帰って蜩の家
北川清子
裏木戸の掛け金少し開けておく
口説かれて熱風ひとつ巻き起こる
ガス欠の熱気球です私です
黒川佳津子
平場でも音威子府の子は弾む
ただのだだちゃになる自動ドア開く
ボレロ聴く祭囃子を聞きながら
河野潤々
栞にと持ち帰りたいきみの指
ヒビ入りの笑顔ドラマになる真夏
探しものならもやもやのこの辺り
斉尾くにこ
どようびのあけがたまでのキンポウゲ
しあさってあたりを斜め包みする
経歴のてもちぶさたな片栗粉
澤野優美子
とてもきれいなひとといた銀杏の樹
残念というほどでない朝の月
急ぐ必要はない桃の缶詰
重森恒雄
失恋のフラッシュバック稲光
恋情の嵐の中にいる無風
明日なんてほとんど今日のやり残し
杉山昌善
わたしよりきれいな花の短い命
声変わりした夏の日の朝帰り
花柄の下着をたたむおままごと
須藤しんのすけ
絵手紙の海の青とか涙とか
菜種梅雨ひとり時間のミントティ
古民家に誘われ星と語り合う
妙
空き瓶に咲くありあまる白い午後
おしゃべりな風が刻んでゆく水面
きれぎれの記憶を助詞でつなぐ夜
西田雅子
晩夏光バンド映画の金字塔
豆朝顔いちおう手勢リスト入り
道草はいずこへ続くテラリウム
芳賀博子
竹光を隠し強気にでてしまう
向日葵が咲いたよ誰も笑わない
体内の水がタプタプ飛べないね
林 操
すがたみにこころがわりをせまられる
傘持って歩く午前を引きずって
後ろから狙う日本の民主主義
飛伝応