侘びは琵琶 湖には湖の愁ひあり
飯田良祐
侘びは琵琶。
上から読んでも下から読んでも、わびはびわ。
その可笑しみに虚を衝かれるや、
眼前に愁ひの湖が広がる。
はるばると海のごとき琵琶湖。
さて、侘びにはいくつかの意味があり、
たとえば手元の辞書には
・茶道・俳諧などにおける美的理念の一。
・閑寂な生活を楽しむこと。
・思いわずらうこと。悲嘆にくれること。
とあるけれど、
本作の「侘び」はそのいずれでもあって
いずれでもないような、不思議なニュアンス。
湖には湖の、のリフレイン。
愁ひ、の旧仮名。
技巧的でありながら、すっと胸深くに沁み入り
ざわつきが鎮まっていくよう。
静けさにたたずめば、どこからか
諸行無常と、琵琶の音もかすかに。
(川柳カード叢書②『実朝の首』 飯田良祐
/川柳カード 2015)
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