「火」の漢字の由来は、燃え立つ炎のかたちの象形文字から。
火の音「ヒ」の語源は諸説あるが、中でも興味深い説は次の通り。奈良時代あるいは平安時代以降に、p → (f → ) h に発音が変化したため、火の「ヒ・ホ」の元の音は、「pi・po」というもの。「p」の音は、焚火で木が爆ぜるパチっというp の音ではないか、と。また、もう一つの「火」の音「カ」は、激しく焼けるときの音。
人類が火を使って生活していた証拠は、40万~50万年前の北京原人の遺跡から発見されている。人類と火が出会い、火を利用するまでに、次の4つの段階が考えられている。
(1)人類が山火事など自然火に興味をもち、その残り火に近づく。(猿人の時代)
(2)恐れつつも火に触れ、興味を持ち、次第に慣れてしまう。(猿人の時代)
(3)火の暖かさ、明るさを知り、利用できることを発見。(猿人~原人の時代)
(4)火を焚火により保存し、恒常的に利用する。(北京原人)
(5)必要に応じて火がつくれる段階へ。(旧人~新人、約20万年前)
人類が火と出会い、火を利用して、つくれるまでの、とてつもなく長い時間。
上書きをしてもされても火の記憶 西山奈津実