Vol. 167 鏡

「鏡(かがみ)」の語源には諸説あり、
・目に映る姿を見るものの意味で「かげみ(影見)」が転じた。
・輝いていて見るものの意味で「かがみ(輝見)」
・古くは祭具として用いられていたことから、「神」に通じる。

古代より鏡に映像が「映る」という現象は、極めて神秘的なものとされ、神々の力を宿すもの、または真実を映し出す象徴とされてきた。

そのため、祭祀の道具としての性格を帯びていく。鏡の面が、世界の「こちら側」と「あちら側」を分けるレンズのようなものと捉えられ、鏡の向こうにもう一つの世界がある、という観念は世界各地で見られる。

最初の鏡は、水溜りの水面に自らの姿などを映す水鏡であったと考えられる。その後、石や金属を磨いて鏡として使用。

鏡によって、初めて人は自分自身を客観的に見ることができた。鏡に映った自分を自分と認識できる能力を「自己鏡映像認知能力」と言い、動物の知能を測るための一つの目安となる。チンパンジーなどは、鏡に映る姿を自分として認識し、毛繕いのときに使うことがある。

 水差しを置いても揺れる鏡の間  笹田かなえ