第8回「ゆにゼミ」レポート

傷ついた心を癒やし、ひらく。
詩の言葉がもつ大きな力に
圧倒されました。

8月4日(日)、作家・詩人の寮 美千子さんをお迎えし、「詩のことば」をテーマに第8回ゆにゼミを開催しました。

第1部は、寮先生の講演。最初に、寮先生が2007年から2016年まで「絵本と詩の教室」の講師を務めていた奈良少年刑務所の紹介ビデオを視聴。続いて、先生が講師を引き受けられた経緯や授業の様子についてお話を聞きました。受講生は強盗、殺人、覚醒剤などの重い罪で服役している17~25歳の受刑者たち。彼らに共通するのは、虐待や貧困といった悲惨な環境で育つなかで、心が傷つき、歪み、内側に閉じていることでした。そんな彼らの心をほぐし、情緒を育てるために開かれたのが、寮先生の「絵本と詩の教室」です。先生の話で印象に残ったのは、受講生の変化です。一人ずつ詩を書いて発表し、クラスメイトが受け止め、共感する。すると、本人が心の奥にしまっていた自分の生い立ちを話し始め、教室にはやさしい思いがあふれていったそうです。受講生の詩もいくつか朗読してくださいましたが、どれもピュアな輝きに満ちていて、その背景の物語に涙を誘われる場面もありました。詩の言葉には、心を癒やし、人を変える力がある。「受講生のなかで変わらない人はいなかった」という先生の言葉が心に深く響きました。

第2部は川柳句会です。事前投句の題は、寮先生の著書『あふれでたのはやさしさだった』にちなんで、「あふれる」。ゲスト選者として、多彩な短歌イベントのプロデュースや第一歌集『鳥の跡、洞の音』(2023年発行)でも話題の歌人、牛 隆佑さんをお迎えし、ゆに代表・芳賀博子とともに入選句を披講。短歌と川柳という目線の違いもあってか、選ばれた入選句は全く異なり、それぞれの選評も興味深い内容でした。
ゆにゼミの閉会後は、自由参加によるフリー・トークタイム。最後まで寮先生もご参加くださり、詩、短歌、川柳の言葉について、奥深く多彩な意見交換ができました。

当日の入選句です。

第8回ゆにゼミ 句会【あふれる】入選句      2024年8月4日

◆ 牛 隆佑 選
 
入選  
この世であまされ あの世からあふれ 浪越靖政
滝になろう中途半端はやめとこう 芳賀博子
バスタブを桃で溢れさす さみしい 藤田めぐみ
肉汁が溢れ出ぬようプロポーズ 川田由紀子
地球から溢れてますよそこの方 北川清子
志望動機にあふれるオタク的思考 山崎夫美子
   
特選
マッチング別人画像と武勇伝 吉瀬マリ
 
◆芳賀博子 選
 
どこ行こうシャンパンファイト終わったら 大竹明日香
躓いて味方発見犬ふぐり 吉瀬マリ
山積みのゴーヤ三回戦突破 川田由紀子
雨戸からあぶらかだぶら溢れだす 妹尾 凛
あふれでるモチベーションは揮発性 森平洋子
タラレバが溢れる熱帯夜つづく 宮井いずみ
   
特選
ポケットの空があふれて定年へ 小原由佳
 
(まとめ/ゆに編集委員 森平洋子)