月光へ泳がせた手に何もなし
時実新子
中秋の名月に続いて、陰暦9月13日の夜、
すなわち十三夜の月は「後(のち)の月」とも呼ばれ、
こちらも古より愛でられてきました。
今年は11月2日がその日にあたります。
なんて、自身が後の月なども、ああと見上げたりするようになったのは
詩歌に親しむようになってから。
さて今日は、生涯の折々に月を詠み、
あまた秀句をのこした時実新子の作品からの一句です。
美しい月へ手を差し伸べながら
たわむれにひらひらと泳がせてみても
その指先にふれるものも、手のなかにも、何もなし。
それは虚無的でありながらしかし、
失うものもないことの強さや自由を
ひそかにおもしろがっているようにも感じられます。
月光と闇が浮かびあがらせるほっそりした腕、
ただそれのみが描かれていることで、
いっそう鮮烈な印象をのこす、
新子27歳のときの作品です。
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