来た道を引き返す、ただそれだけのこと
整理整頓。わややがな、こんなトコから
聞くミミ持たンくせに聞くなって、コト
田尾八女
とおのいて、きのう、きょう、あす、きえないで
好きじゃない町のいちばん好きな場所
山百合のゆれて よばれているだろう
たかすかまさゆき
団地にはまだ人類が生きている
来世用メモに短角牛と書く
鼻奥がつんとするほど君が好き
田中 赫
B面を愛した影のようなひと
シャラシャラと言葉の笊を振る天使
画面越し背景だけは別の国
七澤銀河
頭のてっぺんから爪先までの 昭和
AIに前頭葉を拉致された
だとしても君の名前が出てこない
浪越靖政
葉月の裏で騒がしい書評たち
宅配ボックスから取り出す酷暑
スクロールしても終わらない追伸
西田雅子
夜香木 遠く近くの鍵の音
抜け駆けを公言されるアイスモカ
ここからは階段のみとなる浄土
芳賀博子
夏本番冷やし中華の具が多め
空き瓶をズラリ並べて過去のこと
熱帯夜母のうちわを思い出す
林 操
ブロックサインでAIにあっかんべ
優先席で四方八方目配りを
ワケありの安さが自己欺瞞を強いる
飛伝応
怒っているのだろう合わせない目線
満月のままフリーズをしてしまう
じっと見るこれが私を生んだ母
平尾正人
しみじみと「水戸黄門」を見入る午後
一時間迷わず歩く散歩道
赤ペンの二重丸印締切日
弘津秋の子
ヨイトマケ ムーンサルトを決めている
地政学リスクにぷるるんと豆腐
挑発に氷柱は素っ気ない
藤山竜骨
立つときも座るときにもどっこいしょ
三角関係ぐちゃぐちゃ捻れ解けやせぬ
仕掛けられた!あいつの仕業絶交だ
堀本のりひろ
秒速で夢と目があう流れ星
粒あんのいい加減さを包み込む
泣きすぎて疲労骨折してしまう
峯島 妙
白い蛇だったパンセになるまでは
陽射しぐんぐん一日中カノン
地中熱空調しゃらりよく振ろう
宮井いずみ
へたくそな字すら愛おしいってバグ
神なんてやめてだらだらしてようよ
腹くくれあなたのことが大好きです
本海万里絵
真っ先に氷枕と怪談本
こめかみに凌霄花のラッパ音
煮魚のふっくら直きに雨上がる
森平洋子
太陽が昇って沈むピラミッド
スカラベもフンコロガシも憧れる
誰でもがミイラに成れた訳じゃない
森 廣子
意思疎通できた葡萄の皮つるん
急所には半夏の幟立てておく
追熟のメロンを待ってプチ家出
山崎夫美子
平和行進 湊川から長田まで
病院のトイレを借りて一休み
長田のトマト食べてなんとか生き返る
吉田利秋
まだ誰もいない朝のカンツォーネ
引き算で決める夏の恋占い
無敵の風につつまれるハンモック
四ツ屋いずみ
緩くなるゆる卓球にゆるテニス
ナンタルチアごちゃごちゃの人生でした
根無し草それでも私生きている
渡辺かおる
影のないしあわせだった昨日まで
気づくまで待とうと決めた月あかり
着地点 ふわりと白い月の音
吾亦紅
七月の三十五度は果たし状
ロッキーのテーマが響き草が立つ
スヌーピーの境地になってしのぐ夏
浅井ゆず
帰路独りなんたって一人サンダーバード
いつか来た道ああそうだ人間ドック
しまなみ瀬戸明石大橋魂翔ばそ
朝倉晴美
ひとりぼっちで食べる場合の切り方だ
締め切りを延ばし続けて八月だ
衝撃の恋の展開毒見役
石野りこ
そしてまた線路のような別れ方
雷は落ちたい場所に落ちている
満員電車スマホ見つめる無表情
伊藤良彦
化粧水月のひかりを混ぜておく
遠花火星へ最後の見積書
ベガの目に地球の傷が二つ三つ
稲葉良岩
「我われ」をスースー運ぶ空気入れ
はためいて裏も表も強硬派
ダウンライトないちにちを進呈す
岩田多佳子
冬がいてあなたがいない風景画
完璧な桃を野猿が鷲掴み
エプロンで聞くイカロスの大笑い
海野トト
ロッカーに隠れてみたら蛸がいた
片方素足もう片方カタツムリ
ホタル来る有罪判決くつがえる
おおさわほてる
渋滞の先頭車両アラヤシキ
スパゲッティサラダ添えましょ閻浮提
解脱までもうひと突きの心太
大竹明日香
母としてレースのハンカチを穢(よご)す
草を刈るにおいあなたを狩るにおい
蓮の首右から順に絞めていく
小沢 史
約束をぽろぽろ零すつづら折り
Y字路で他人になってゆく車
発端は肉一枚のことでした
小原由佳
どの窓も入道雲でふさがれる
受話器から飛び出す鼻を折ってやる
夕顔はすずしい顔で嘘をつく
笠嶋恵美子
後悔の海から白を救い出す
一心に罪を背負っている左脳
離された小指で伏線を辿る
桂 晶月
母さんと私の虹は色違い
幸せの八分音符は母の鐘
千円を認めてくれたオムライス
金子政子
梅雨晴れ間大人時間の白桔梗
お帰りとオオオニバスに乗せられる
ワルツから佳境に入り底抜ける
川田由紀子
会いたいとあ!痛いかさね老女だね
蟋蟀も牛蛙も臥す白い床
ほったどつぼにけつからおちる
河村啓子
新しい靴を買おうよ陽がさす前にさ
パパは元気だねそうだよいつまでもね
あれはなに?鳥かな虫かな空の中
寒雷
雨音のワルツに三行のメール
ため息をしまい定時のバスに乗る
本当の傷は触れずにいるふたり
菊池 京
バラ園でキスのシャワーを浴びている
√2の形できみは解けて行く
カモミール畑で鳥になるわたし
きくちはるか
贈られた胡蝶蘭をば里子へと
花壇にはスベリヒユありツユクサも
チコリ散るなバジル化けるな夏本番
北川清子
憂きことを浅蜊に語るチンアナゴ
彼岸へは何も持たずにいつか森
したこととしてくれたこと白玉と
北 優果
曖昧もやさし日時計水時計
キャンドルを吹き消せばもう深海魚
か弱い女演じたあとの大ジョッキ
黒川佳津子
夏蝶の独語ほとほと聞き逃す
地下街に沈む一角にて氷菓
向日葵を指した矢印から焦げる
黒田弥生
描き添えてあげる七色アンブレラー
ピーマンのおおらか茄子の凡庸さ
水引草夜を回収していった
斉尾くにこ
また一人同級生が遊びだす
どの穴も同じに見えて日が暮れる
夜は更ける急病人を笑わせて
重森恒雄
体温でまわるあなたの万華鏡
手を取って歩道橋から月へ行く
スクールゾーン 人形だってはねないで
下野みかも
正直の一本背負い喰らわせる
どんよりをこぼし 晴天をみつける
未来までこんがらがっている灯り
芝岡かんえもん
お出かけがしたい貯金箱の乳歯
湿っぽい新聞朝はこれからだ
乳酸菌日傘をさして訪れる
島貫麻衣子
倦怠期クリアファイル反っている
合奏は嫌い真夏の流れ星
他人(ひと)嫌い たっぷりつけて蕎麦のつゆ
杉山昌善
2026年8月の会員作品を読む
「山崎夫美子」
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