今日の一句 #734

当たり前過ぎる返事へ向き直る
小林康浩


向き直り、さて。
と、展開が寸止めされていることで、
この先が読み手の中で自由にふくらんでゆく。


たとえば相手がパートナーや親友だったとして、
どんなひと言を返すのかな。
それとも、ちょっと肩を落として吐息ひとつ、とか。


返事が単なる「当たり前」でなく、
「当たり前過ぎる」に、主人公の屈託が込められている。
今そんな返しがほしいんじゃないんだよ、って。
じゃあ、どんな言葉が欲しかったんだろう。


なんて、もどかしい1シーンながら、
「向き直る」がいいな、とも思った。
つまり二人が、今、ここにいるということ。

そして堂々巡りしたり、黙りこくったり。

秒で出てくるAIの最適解と比べると
なんとも非効率なひとときながら、
そういう時間からも小さなドラマが芽生えゆく。


(句集『どぎまぎ』 小林康浩 私家版 2020)

過去ログはこちらから▶