2026年4月

言い訳も種が尽きたと沈丁花
マンネリに味変やっと一歩前
たら・ればの人生これも受け入れる

林 操

台本は硝子に唇を寄せとある
取り巻きが日に日に悪相で陰気
AIに任せて昼寝せよ政治

飛伝応

はんぺんがカオスになっているおでん
同じ景色見ているはずのない親子
お互いに忖度しあう空と海

平尾正人

「もの忘れ」外来 女医さんの笑顔
ぼんやりの帰宅 久しぶりの夕陽
お隣りの溝もお掃除春よ来い

弘津秋の子

頑張れの溢れる朝を掴もうか
血がたぎる津軽海峡大マグロ
茶話会をする一丁目一番地

藤山竜骨

八十路過ぎた夢が叶うのいつかしら
妻と僕にいつの間にやら高い壁
どうすれば夢が叶うか寸足らず

堀本のりひろ

さやさやと春がいうからちらし寿司
笑ってるふりをしているチューリップ
真っ白もまっ黒もない朧月

峯島 妙

オオルリのさえずり読点を隠す
遺伝子を操るマザーツリーの目
揺蕩うて銀河128Hz

宮井いずみ

お別れの寂しさも気に入ってるよ
さよならを言わないいつもまたねって
永遠が欲しい人このゆびとまれ

本海万里絵

イヤホン外す青空の青過ぎて
信じても信じてもミモザの煙
新しいリュック春塵の架空線

森平洋子

お気楽に暮らす一人に隙間風
春を咲く辛夷の蕾遠慮がち
戦へと引っ張られるか知れないね

森 廣子

植木屋の休憩 春を穴かがり
傍系の店主でジオラマが好きで
仏具屋のロイド眼鏡に仕切られる

山崎夫美子

単位死に坂のまんなか春の椅子
スカートを折りモスクワの耳を飼う
石垣をくずせば副の喉ひかり

山本絲人

天空の川柳句会ここですか
存在はショートメールを五連発
母の声そろそろこちら来ませんか

吉田利秋

真横流れる春寒の三連符
福寿草乱れ咲く脇が甘くて
薄紅に鎮座するビバルディ

四ツ屋いずみ

風の吹く両隣亡き薩摩国
田ノ海に焼酎作る芋畑
亡夫の骨ここに眠りて墓参り

渡辺かおる

降るものを受けた手のひら開け放つ
少年の背丈ひょろひょろ雪を割る
地吹雪を抜けて一気に花吹雪

吾亦紅

急ぎ足の春に割り込む長電話
洗ってもうっすら昨日纏う服
不穏の虫どこかに潜む桜の木

浅井ゆず

来賓のなくて佳き佳き卒業式
Zoomにて卒業証書授与の朝
卒業のお子達みんなスマホ内

朝倉晴美

ひとくちサイズになっていたオオカミ
晩ごはん作りながらのサヨウナラ
捏造の恋の6色ボールペン

石野りこ

泣かないと決めた涙は枯れている
五十年生きた遺影はそのままで
軽すぎて頑張ろうとは言えず

伊藤良彦

鹿の眼に捨てた仮面が反射する
朝ぼらけ生まれる前の夢を聞く
櫻麩で仲直りした顔ふたつ

稲葉良岩

ビロードに触れただろうか氷像の
壁紙のへりのあなたが捲れそう
ねじりまんぽゴクゴク喉が鳴っている

岩田多佳子

気まぐれな風にまかせて早や三月
誰がために生きるってね花種蒔く
桜東風回転ドアのゆるく開き

海野エリー

春キャベツたまには愛を語ります
卒業の一瞬揺れた黒い髪
神の座に鎮座まします春キャベツ

おおさわほてる

春の曙ただいま発酵中
瓢箪の中なる海も封鎖中
決め球は外角高めヒステリー球

大竹明日香

ぼんぼりを倒しにいくと置き手紙
ぽっかりと金魚口あけ主婦湿疹
春色の昆虫採集キット買う

小沢 史

なぞなぞを出し合い長くなる散歩
父さんのたまに大きく見える傘
昨日の私をウフフと持ち歩く

小原由佳

薄墨で描いた達磨が泣いている
目薬を差すたび君が透けていく
耳朶そめて黙礼かえす交差点

笠嶋恵美子

幻を追った限界集落で
密林を彷徨うモノクロのお面
転生が終わり優しい丸になる

桂 晶月

昼飲みの娘豚まん下げて来る   
春嵐急いでギガを買いに行く
なるようになると知ってる十五歳

川田由紀子

カーテンの人間嫌い続いている
鰻丼は喧嘩の仲裁にはならず
遺伝子が椿の赤に反応する

河村啓子

思い出しちゃったあの頃の原田郁子が聞こえて
あ「らいおんハート」だ どこかが痛むような
僕が好きだったのは小林桂が好きなキミ

寒雷

プチトマト一話完結だったはず
紙の月わたせなかった相聞歌
鈍角の視線ふりむくなせなか

菊池 京

れんげ摘みときどき蛙茶に誘う
さくらさくら梅さくら桃さくらさくらさくら
大潮の月と日いづこ菜の花はここ

北川清子

草団子賑やかだったころの家
物分かりいい人演じ花曇り
沼の底さらう本音が顔を出す

黒川佳津子

ギニョール消ゆ「ポワソンダブリル・・・」と残し
はくれんは夜の余白を思量する
ピツィカートの指からてふてふのふわ

黒田弥生

お前は何者 常温保存生パスタ
記念日じゃないのでケーキ屋へ寄ろう
ランニングシャツでランニングはしない

河野潤々

仲裁人染井吉野へ依頼する
辺境の民家しずかに搔き乱す
読後感ブルーアワーの時へ入る

斉尾くにこ

雨で見えない星の誕生日
イタチ横切る何事もない月夜
サヨナラのランナーとして走り出す

重森恒雄

明日にはきっとアニメになれる兄
勝ち負けを母が手早く包む餡
道路標識まいにち歌を聴かせてる

下野みかも

桃缶は食べなきゃいけませんよ僕
ロザリオが頸動脈をしめてくる
しあわせの免許ずうっと不携帯

芝岡かんえもん

がんばれの声が我にも戦隊ショー
異動を励ます換毛期の尻尾
優しくなりたい眼鏡の曇り拭く

島貫麻衣子

親族が空席にした俺の椅子
青春で上塗りをするセピア色
卓上の水が揺れてるゴジラ来る

杉山昌善

ただ風にゆれてるだけのひとでした
雨音を分けあいいきてきたのです
佇めばたちまち蝶になるからだ

たかすかまさゆき

下ネタが暴走はじめる春うらら
源氏名で八十年を生きてきた
酒臭い息と三途の川渡る

浪越靖政

線引くたびに蕾ふくらむ製図
申告の数字に沈む桜パフェ
余白の深呼吸 茶葉がひらくまで

西田雅子

息つぎをして今日の夕焼け泳ぎきる
だとしても地図の中には住めないわ
秒針狂うぐわんと君がゆがむ

西山奈津実

武器よりも花がほしくて声をだす
滅びって濃い青を着てやってくる
こんにちは遠かったはずの戦争

温水ふみ

花冷のカミソリ負けの尾を引いて
地団太を踏む振付に他意はない
ゆく春の船底で読む私小説

芳賀博子

会員作品を読む 2026年4月 芳賀博子

会員作品第57回をお届けします。

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