壁紙のムーミン谷は置いていく
石野りこ
引越しだろうか。
荷造りも終わり、すっきりがらんとした部屋で、
壁紙をしみじみと眺めている。
子どものころから使っていた部屋か、
あるいはわが子にしつらえた部屋かしらん。
壁紙のムーミン谷は、きっとあの独特の色調で、
どこか懐かしく、どこか不思議。
そんな世界に囲まれて、
部屋の主もまたムーミン谷の住人だった。
想像のなかで、個性豊かな仲間たちと
どれほど冒険を楽しんだことだろう。
けれど、いよいよサヨナラの時間。
置いていく、残していく、谷へ、
ありがとう、またいつか。
ファンタジーと現実が、やわらかに溶け合う一句は
ゆにの「今月の会員作品」から。
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