実家に天窓のある部屋がある。正確には天窓ではないが、天井に近い壁にあるので天窓と呼んでいた。
天窓の歴史は、ローマ時代のパンテオン神殿まで遡る。ヨーロッパでは、冬場の日照時間が少なかったため、天窓から太陽の日差しを取り入れていたのだ。
日本で天窓が取り入れられたのは、明治期に、洋風建築が公共施設などに導入されるようになってから。日本では雨が多いことから、一般住宅では敬遠されがちだったが、採光と風通しのよさから、天窓が新築や、リフォームに取り入れられるようになった。
天窓のメリットは、空が見えて開放感があり、雲や月の動き、四季の移ろいを感じることができる等。特に採光量は、一般的なガラス窓の3倍ともいわれている。逆に、暑い、雨漏りしやすい、メンテナンスしにくい等がある。が、今では技術の進化やガラスの強化等で、ほとんど克服できているらしい。
空き家となった実家に帰ると、今でも一番落ち着く場所は、家族がいつも集まっていた天窓のある、あの部屋である。
天窓の月から静寂を逃がす 月波与生