守秘義務はあるし豆腐は崩れるし
伊藤良彦
たまたま何か、聞かされちゃったのかなあ。
「えっ」レベルか、
「えーっっ‼」レベルか。
驚愕の度合いはともあれ、知ってしまった以上、
抱えたままに、明日からも何事もなく振る舞わねばならない。
ちょっと気が重い。
そんな気分につられるように、
箸でつまんだ豆腐も、とろほたと崩れる。
仕事帰りの居酒屋だろうか。
相手は同僚か上司か、それとも部下か。
「守秘義務」と「豆腐」。
この距離のある二つを、
「あるし」「崩れるし」でフラットに並べ、
人生のちょっとしたままならなさや可笑しみを、
ペーソスをたたえつつ、軽妙に描き出している。
ところで、この豆腐は冷奴か、それとも揚げ出し豆腐か。
出典は、ゆにの「今月の会員作品」から。
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