今日の一句 #511

マンションの光の一部こしひかり  川合大祐

光とこしひかり、にクスッ。
続いて鼻のつけ根にツンとくる。

炊きたてのこしひかりが放つ、ぴかぴかの光。
ほんにささやかながら

ぐっとフォーカスされると、充分にまぶしく尊い。
でもそれは、わが家に満ちる光のほんの一部。
だなんて、ああ、なんと明るくほのぼのした気持ちになれる句だろう。


もっとも「マンション」は棟全体を指すのかもしれず、

光は光通信、とナンセンスに読むも楽しい。

けれど私はやっぱり、スイートホームと受けとめたい。
シャレなど交えて、ちょっとはぐらかしたような書き方に
たっぷりの愛があふれているようで。


本作は、今春刊行された川合大祐句集『リバーワールド』より引く。
「怒涛の1001句」には実験的、刺激的な作品がずらり。

ページを繰るたびに翻弄されつつ、
そのところどころに見え隠れするキュンを偏愛している。

 トマト屋がトマトを売っている 泣けよ
 花の名をだれも信じてくれない日
 夏の野に●の字●の字の●●の跡



(句集『リバーワールド』川合大祐/書肆侃侃房)







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