マンションの光の一部こしひかり 川合大祐
光とこしひかり、にクスッ。
続いて鼻のつけ根にツンとくる。
炊きたてのこしひかりが放つ、ぴかぴかの光。
ほんにささやかながら
ぐっとフォーカスされると、充分にまぶしく尊い。
でもそれは、わが家に満ちる光のほんの一部。
だなんて、ああ、なんと明るくほのぼのした気持ちになれる句だろう。
もっとも「マンション」は棟全体を指すのかもしれず、
光は光通信、とナンセンスに読むも楽しい。
けれど私はやっぱり、スイートホームと受けとめたい。
シャレなど交えて、ちょっとはぐらかしたような書き方に
たっぷりの愛があふれているようで。
本作は、今春刊行された川合大祐句集『リバーワールド』より引く。
「怒涛の1001句」には実験的、刺激的な作品がずらり。
ページを繰るたびに翻弄されつつ、
そのところどころに見え隠れするキュンを、偏愛している。
トマト屋がトマトを売っている 泣けよ
花の名をだれも信じてくれない日
夏の野に●の字●の字の●●の跡
(句集『リバーワールド』川合大祐/書肆侃侃房)
過去ログはこちらから▶