Vol.3 競 馬

 いつの頃か競馬を見るのが好きになった。馬の眼や耳もかわいいけれど、なんといっても横から見る走る姿がかっこいい。特にテレビ画面がワイドになってからは、馬の鼻先からしっぽまですっぽり画面に納まり、競馬のためにワイド画面が登場したようなもの。

 16世紀にイギリスで行われた競馬。やがて競走馬を目的として品種改良されたサラブレットと呼ばれる品種が誕生する。競馬はイギリス王室の庇護の下、アメリカ、ヨーロッパ全土にも広まり、日本に入ってきたのは19世紀になってから。

 かたや、古く日本では「競馬」と書いて、「くらべうま」と呼ばれる神事がある。平安時代からの伝統行事で、今も上賀茂神社などで行われており、当時の装束を着た騎手を乗せて馬が駆け抜けてゆく。

 今年5月の上賀茂神社での競べ馬は、新型コロナの影響で中止となり、競馬観戦はネット予約で指定席を購入しての観戦となっている。

 実は、競馬場へ行ったことも、馬券を買ったこともない。競馬好きの知人によると、「競馬場で馬券を買って見るともっと好きになるよ。」と。リアルな馬も競馬場も、それは美しいらしい。けれど、当分私は、ワイドなテレビ画面に収まって走る馬たちを、うっとり眺めていたい。

  平原を走るたてがみほしいから  ひとり静  

  馬疾る 夢のもろもろ短命な   西城真紀