第3回「ゆにゼミ」レポート

知られざる装幀の世界を
ワクワク探訪しました。

2月26日(土)、装幀家の濱崎実幸さんをお迎えし、「装幀とことば」をテーマに第3回ゆにゼミを開催しました。

第1部は、濱崎さんの講演。『母系(河野裕子)』『砂丘律(千種創一)』『髷を切る(芳賀博子)』などを題材に、一冊の本が形作られるプロセスを解説。作品のスライドを次々とZoom画面に示し、わかりやすく話してくださいました。歌集を読んで、脈々と続く血の温かさを感じたところから生まれたという『母系』は、濱崎さん入魂の一冊。色や素材、印刷、製本に至るこだわりには、圧倒されるばかりでした。中東在住の著者から天幕をイメージしてデザインしたという『砂丘律』は、不織布や糸の使い方が斬新。読者がどこへでも無造作に持ち歩けるようにと、軽さにも配慮したそうです。「原稿を読むと、著者が目の前に立ち現れる」「装幀は筆者の覚悟に付き合う仕事」といった言葉も印象的でした。

第2部は、装幀にちなんで「帯」をテーマに事前投句いただいた作品から、入選句の披講。選者は、ゆに会員の藤田めぐみさん、ゆに編集委員の山崎夫美子。「バラエティに富んでいて、選ぶのが楽しかった」という二人の言葉どおり、「紐帯」「箸帯」「包帯」「帯文」「地帯」など、多彩な帯の佳句が画面に映し出され、目と耳で味わいました。

あっという間の濃い2時間。最後は各地からご参加くださった方々の温かい拍手につつまれて、無事に閉会しました。

句会の入選句と、軸吟(選者作品)を掲載します。

◆藤田めぐみ 選
 
ツンドラ地帯声をかけよがありません 岩田多佳子
帯破れ語り始める私小説 菊池 京
箸帯をほどいてあげる雛祭
通販で椎名林檎の帯を買う 小池正博
母の帯高値で売れて寒戻る 川田由紀子
追憶の帯をほどいてゆく林檎 西田雅子
包帯を外した足の照れ笑い
   
特選
紐帯の意田辺聖子で知る晩夏 朝倉晴美
 
軸吟 腕に抱く締め跡のない母の帯 藤田めぐみ
   
◆山崎夫美子 選
 
しゅるしゅると帯とく福徳岡ノ場 斉尾くにこ
安全地帯飛び出してからサンバ 宮井いずみ
箸帯をほどいてあげる雛祭
クジラゆく水平線の帯をして 西田雅子
心配をすると行き着く湿地帯 小原由佳
その帯は僕の季節をせきとめる 小池正博
母の帯高値で売れて寒戻る 川田由紀子
   
特選
帯文をほどけば富士の裾野なり 河村啓子
 
軸吟 招待状届くそれから熱帯雨林 山崎夫美子