以前は、旅の思い出に栞を買うのが楽しみだった。読み終わったあとも、旅の栞が挟んだままの本が何冊もある。今、句集に挟むのは栞ではなく、もっぱら付箋。好きな句、気になる句に色分けして付箋をつけている。
栞=しおりは、動詞「枝折る(しおる)」の連用形が名詞化された語で、「しおる」とは、山道などを歩く際、迷わないように木の枝を折って道しるべとすること。そこから道しるべを「しおり」と言うようになった。さらに転じて、書物の間に挟んで目印とするものや、案内書などを「しおり」と言うように。
けれど、もともとは、「撓る(しほる)」という、草木をたわめるという言葉が本当の「しおり」の由来で、「栞」の漢字は当て字。「栞」という漢字の2つの「干」は2本の竿を表す象形で、高さを揃えて削ることを意味する。その下に「木」を合わせて、木を削って作った道しるべを意味するようになった。
日本のしおりの原型は、仏教の経巻と共に入ってきた象牙の籤(せん)。籤という漢字には“重ねたものに差し込む”という意味があり、奈良、平安時代は竹や木の籤が書物や巻物に差し込まれる形で使われていた。印刷された紙製しおりが一般的に普及するのは大正以降。文庫本しおりは、岩波文庫が最初と言われ、昭和になってから。
栞って茨と類語だとおもう 清水かおり