Vol. 63 ひまわり

 夏の花で人気のあるひまわり。ひまわりの原産地は北米で、その歴史は紀元前1500年頃まで遡る。タンパク質と脂肪を多く含むひまわりの種は、北米の先住民族にとって欠かせない栄養源となる。もともとは、観賞用でなく、人々に栄養をもたらした食品であった。

 ヨーロッパへは、16世紀頃、まずスペインに。後にフランス、イギリス、ロシアへと広まっていく。主にヨーロッパでは観賞用に栽培され、改良もされていった。ロシアでは、食用油として、広まってゆく。

 ヨーロッパから中国、そして日本へ。江戸時代(1661~1672年)に渡来しているようで、ひまわりは「丈菊」として紹介されている。「ひまわり」という名前は、太陽の移動につれて花の向きが変わるという性質からつけられたとされている。「日廻り」から「向日葵」へ。

 ひまわりにまつわるギリシャ神話がある。太陽神アポロンへの水の精クリュティエの想いは叶わぬ恋。クリュティエは、毎日アポロンが空の道を馬車で東から西へ駆けていくようすを、涙を流しながら見上げていた。クリュティエは9日間同じ場所に立ち続け、天空のアポロンの姿を追っていた。そのためクリュティエの足は地面に根をつけ、ひまわりへと姿を変えてしまった…。ひまわりの「あなただけを見つめる」という花言葉の由来なのだそう。

  ひまわりは焦げて聖者のように立つ  東野節子