Vol. 73 梨

 夏のスイカからバトンは秋の梨へ。甘くてみずみずしく、あのさわやかなシャリャリ感がたまらない梨。が、あの甘さやシャリシャリ感はここ100年程のことで、ずっと昔は酸っぱく歯触りもちがうものだったとか…。

 梨の語源には、果肉が白いことから「なかしろ(中白)」が略されて「ナシ」になったとする説。梨は風があると実らないことから「かぜなし(風無し)」で、「ナシ」になったとする説等あるが、「中白」由来説が有名。

 また平安時代には、「ナシ」が「無し」に通じることを忌んで「ありのみ(有の実)」と呼ばれたりしていた。

 「梨」の字の「利」は穀物を表す「のぎへん(禾)」に、刃物を表す「りっとう」を組み合わせたもの。この「利」という字の意味から、歯切れよく手軽に食べやすい果物ということで「梨」という字ができたとも。

 日本原産の和梨は、弥生時代から食されていた。江戸時代末期には150種以上の品種が作られ、広く親しまれるように。明治時代には、甘くて病気にも強い「長十郎」がつくられ、その後、皮が薄くて柔らかく甘い梨「二十世紀」がつくられる。20世紀に王座をなす梨にとの願いを込めて「二十世紀」と命名される。現在では、さらに甘い「幸水」が登場。いま日本で一番育てられている品種が「幸水」。梨の世界でも、もっと甘く、が求められている。

  エプロンを広げきれいな梨もらう  弘津秋の子