今日の一句 #572

貝塚を掘れば時実新子論
川合大祐


今日の一句は、先月発行の
『トイレの後は電気を消して』より引く。
本書は川合大祐さん、千春さんの共著で、
ともに川柳作家で人生のパートナーでもあるお二人の、
2021年6月から2022年6月までを記録した

交換日記風川柳&エッセイ集。

その中に、こんなくだりがある、
「大祐より」として


「二人で興味が一致したのは川柳のことで、
夕食(僕の作ったカレー)後から風呂の中まで、
ずっと時実新子のことを話していた。
「新子さんすげえ」で片付けちゃえば
片付いてしまうことなんだけど、

新子さんを(なんか親しそうに語ってるけど
僕らは二人とも会ったことはない)
どのように受容・批判・発展させてくかが
現代川柳の鍵かなと思う。」

確かに。
と、時実新子門の一人としてうれしく、
また一川柳人としてもうなずく。

1987年発行の句集『有夫恋』が
異例のベストセラーになり、
情念を鮮烈に詠んだ作品で

川柳界に新しい扉を開いた
時実新子は今年、没後15年を迎えた。

新子句を読むこともさることながら、
現代川柳史の中で、
作品がどう読まれ、論じられてきたのかを
検証していくのも大切と思う。
貝塚は、これからへつながる史跡でもある。


さて、本書は
川合大祐さん、千春さんの

愛と川柳にあふれた日々がユーモラスにつづられる一方、
それぞれの視点でとらえられた現代川柳の「今」が、

新鮮で興味深い。

(『トイレの後は電気を消して』 川合大祐・千春/満天の星  2022) 

☆「時実新子」について、くわしくはこちらをどうぞ。
オフィシャルウェブサイト「時実新子の川柳大学」
サイト内のアーカイブページでは

リンク先のNHKアーカイブスで
時実新子の映像もご覧いただけます。


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