Vol. 83 末

 

 12月の末は、師走とか年の瀬等といって、何かとせわしい時期である。

 「末」は「木」の上の方に印(-)をつけ、先端部分、すえ、末端を指している指事文字。太い幹の木であっても、枝分かれをし、その先は細く小さくなっているので、この部分を表現したのが「末」である。

 「師走」は奈良時代、万葉集がつくられたころからある言葉。師走の師は、お坊さんが由来とされて、お正月にも先祖供養をしていたため、お坊さんはひっぱりだこで、忙しくあちらこちらと走りまわっていた時期なので、師走は忙しいとなった。江戸時代くらいまでは、「師馳(しはす)」と書いていた。

 年の瀬は、江戸時代ごろから使われた比較的新しい言葉。「瀬」は、水の流れを表す言葉で、流れが急なところを指す。「年の瀬」は江戸時代の庶民の生活から出てきたことばで比喩的で、風流な言い方である。川柳にもよく使われたとか。

 昔は年末にツケや借金を返して、心身を改めて新年を迎えるのが通例だったので、返済が近づきお金がなければ、精神的に川の瀬に流される思いかもしれない。また、戦前まで(地方では戦後も)、誕生日ではなく、元日に1歳年をとる数え年がふつうだったので、直前の12月は余計に慌ただしい気持ちになったようだ。

 さて、私の師走。年賀状書き、大掃除、お正月の準備…どれを省こう。

  十二月末おごそかに生き残る  唐沢春樹