Vol. 86 鎖 骨

 鎖骨は真上から見るとS字型をした骨で、腕、肩、胸、背骨をつなぎ合わせ、その動きを連結し、助けているという重要な役割がある。腕を自由に動かすことができるのは鎖骨のおかげであり、首付近にある神経や血管などの循環器系を守る役割もある。人体の中で最も折れやすい骨。

 また、ウマ、イヌ、ウシ、ゾウのような走行性の哺乳類等では退化している場合も多い。鎖骨がないと前脚を内側に曲げ保持することが困難で、鎖骨のない動物は木登りができないことから、早期に草原に進出した動物は長距離移動に適応して鎖骨が退化し、長期間森林に生息した動物には鎖骨が残っているのではないかと考えられている。

 鎖骨はラテン語名では、「小さな鍵」の意味がある。古代中国では、恐ろし気な由来もあって、囚人を捕らえておくために、鎖骨の後ろに穴をあけて鎖を通したことに由来するとも。

 また、古くは、菩薩の身体の中にあると言われる鎖状に繋がった架空の骨を指し、仏でいう舎利に相当する聖遺物とされる。こちらの由来に、ほっ。

  朝を待つ象の鎖骨にふれながら  瀧村小奈生